疾患概念と疫学

疾患概念

NMOに特異的な自己抗体である抗アクアポリン4抗体(抗AQP4抗体)の発見により、NMOSDの疾患概念が確立されました。

NMOSD診断の変遷

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NMOSD:視神経脊髄炎スペクトラム障害、MS:多発性硬化症、AQP4:アクアポリン4、IPND:International Panel for NMO Diagnosis、ON:視神経炎
*追加基準:両側視神経炎;片目の視力が少なくとも20/200以下の重症型の視神経炎、少なくとも片方の四肢で疾患に関連した脱力が見られること

Dutra BG, et al. Radiographics 2018; 38: 169-193

  • 2004年、NMO-IgG(抗アクアポリン4[AQP4]抗体)が発見されました1)
  • 2006年のWingerchukらの診断基準までは、視神経脊髄炎(NMO)診断には視神経炎と急性脊髄炎の両方が必須でした2)
  • 抗AQP4抗体陽性例は、脳症候群を呈することも稀ではなく、脳症候群で発症する場合もあります。
  • 新たな国際診断基準(2015年)では、NMOの総称として視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD)が提唱されました3)。この基準では抗AQP4抗体陽性の場合、他疾患が除外されれば主要臨床症候(視神経炎、急性脊髄炎、脳症候群)のうち1つでもあてはまればNMOSDと診断されます。
  • 抗AQP4抗体の有無により患者の治療方針が大きく変わるため、抗AQP4抗体陽性で中枢神経系の病変に由来する症状や徴候を示す患者をNMOSDとして一括りにすることが、実臨床の場では有用です。

1) Lennon VA et al. Lancet 2004; 364: 2106-2112.
2) Wingerchuk DM et al. Neurology 2006; 66: 1485-1489.
3) Wingerchuk DM et al. Neurology 2015; 85: 177-189.

疫学

多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害診療ガイドライン2023では、NMOSDの疫学的特徴について下記のように記載されています。

1.中枢神経系炎症性脱髄疾患概要
C. 視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)

疫学

世界の各地域における有病率は、成人で0.34~10人/10万人程度、小児で0.06~0.22人/10万人程度である。MSのように人種や地域による大きな差はないが、東アジア(3~5人/10万人程度)やアフロ・カリブ(4~10人/10万人程度)など有色人種に多く、欧米白人(~1人/10万人)で少ない。発症は小児から高齢者まで幅広くみられるが30歳代後半~50歳代に多く、60歳以上での発症も20~30%に認められる。平均発症年齢は地域によって若干の差を認めるものの概ね35~45歳である。患者の70~90%、抗体陽性例の約90%は女性である。本邦で実施された2011年対象のNMO全国臨床疫学調査では、有病率は3.42人/10万人、平均発症年齢は42.2歳、86.5%が女性であった。2017年対象の第5回多発性硬化症・視神経脊髄炎全国臨床疫学調査では、NMOSDの有病率は5.4人/10万人、発症年齢中央値(四分位)は44(33~55)歳、86.7%が女性であった。

日本神経学会 監、「多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害診療ガイドライン」作成委員会
編:多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害診療ガイドライン2023、p.7、2023、医学書院.
[利益相反:本書籍の著者にアレクシオンファーマ合同会社より講演料、研究助成金を受領している者が含まれる。]