症状

NMOSDの主な症状

NMOSDは、中枢神経のどこで炎症が起きるかによって症状は異なり、以下のようなさまざまな症状を呈することが知られています。
多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害診療ガイドライン2023では、NMOSDの症状について下記のように記載されています。

1.中枢神経系炎症性脱髄疾患概要
C. 視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)

臨床像

重症の視神経炎と脊髄炎を特徴とするほか、AQP4が高発現する第三脳室周囲、第四脳室周囲、中脳水道周囲、延髄背側(最後野)などに病変が好発するため、特徴的な症候を呈する。視神経炎では中心暗点、盲点中心暗点をきたすことが多いが、水平半盲、垂直半盲、全視野欠損などさまざまなパターンを呈することがある。また、急性期には失明に至ることがある。脊髄炎は横断性であることが多く、重症の運動麻痺、感覚障害、膀胱直腸障害を呈することが多い。回復期には有痛性強直性攣縮や疼痛などの難治性感覚障害を認めやすい。延髄最後野病変による難治性の吃逆・嘔吐や、視床下部病変による尿崩症や抗利尿ホルモン分泌不適合症候群、症候性ナルコレプシーを認めることがある。シェーグレン症候群や慢性甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症などのほかの自己免疫疾患を合併することが多い。

日本神経学会 監、「多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害診療ガイドライン」作成委員会
編:多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害診療ガイドライン2023、p.7-8、2023、医学書院.
[利益相反:本書籍の著者にアレクシオンファーマ合同会社より講演料、研究助成金を受領している者が含まれる。]

初発発作の好発部位

NMOSDの初発発作は、神経損傷の種類と部位によって異なります。
海外のアンケート調査によると、初発発作では、痛み、疲労、硬直や痙縮、視野障害などがみられたとの報告がありました(海外データ)1)

NMOSDの疫学的特徴1)(海外データ)

グラフ
研究概要
米国Neuroimmunology ClinicのFacebook非公開グループの患者全員を対象にオンライン形式で調査した。調査に参加した160例のうち、151例が患者、9人が支援者と介護者であった。
結果
痛みは83%(125/151例)、疲労は81%(123/151例)、硬直や痙縮は63%(95/151例)が経験したと報告されました(図A)。視覚への影響を訴えた患者のうち、視覚障害94%(88/94例)、複視39%(37/95例)、周辺視野の喪失71%(67/94例)、中心視野の喪失61%(58/95例)を経験したと報告されました(図B)。身体症状は、膀胱障害47%(71/151例)、腸障害39%(58/150例)、性機能障害36%(54/148例)を経験したと報告されました(図C)。認知・感情症状は59%(89/150例)の患者に見られたと報告されました(図D)。

1)Delgado-Garcia G, et al. Front Neurol. 2022; 13: 966428.
[利益相反:本論文の著者にAlexion Pharmaceuticals. Inc.より資金提供されている者が含まれる]

視神経炎と脊髄炎

Mealyらの調査では、初発発作による神経症状が脊髄炎のみの患者は50.2%(94/187例)、視神経炎のみの患者は35.3%(66/187例)、視神経炎と脊髄炎があった患者は10.2%(19/187例)に認められました(海外データ)2)

NMOSD初発発作の種類とその割合(海外データ)2)

NMOSD初発発作の種類とその割合(海外データ)2) イメージ画像

Mealy MA, et al. Arch Neurol. 2012; 69: 1176-1180より作成

研究概要
米国のNMO治療センターにおける5年間の医療記録を用いた後ろ向き研究より。NMO/NMOSD患者187例を対象とした、初発発作の症状と部位の調査。

2)Mealy MA, et al. Arch Neurol. 2012; 69: 1176-1180.
[利益相反:本論文の著者にAlexion Pharmaceuticals. Inc.より資金提供されている者が含まれる]

疼痛・不快感

76.2%の患者に疼痛と不快感がみられることが報告されています(海外データ)3)

76.2% 疼痛 / 不快感 イメージ画像

Mealy MA, et al. Int J MS Care. 2019; 21: 129-134より作図

研究概要
米国の神経疾患専門病院で治療を受けたNMOSD患者 21例(平均罹患期間8.2年)のQOLスコアを評価し、多発性硬化 症及び健常集団と比較することによりNMOSDが健康関連QOLに及ぼす影響について検討。

3) Mealy MA, et al. Int J MS Care. 2019; 21: 129-134.
[利益相反:本論文の著者にAlexion Pharmaceuticals. Inc.の社員が含まれる。
また、著者にAlexion Pharmaceuticals. Inc.より資金提供されている者が含まれる]

不安・抑うつ

71.4%の患者が不安や抑うつを訴えたと報告されています(EQ-5D-5L*)(海外データ)2)

71.4% 不安・抑うつ(EQ-5D-5L) イメージ画像

Mealy MA, et al. Int J MS Care. 2019; 21: 129-134より作成

研究概要
米国の神経疾患専門病院で治療を受けたNMOSD患者 21例(平均罹患期間8.2年)のQOLスコアを評価し、多発性硬化 症及び健常集団と比較することによりNMOSDが健康関連QOLに及ぼす影響について検討。

健康関連QOLを測定するために開発された包括的な評価尺度であり、5項目(移動の程度、身の回りの管理、ふだんの生活、痛み・不快感、不安・ふさぎ込み)の質問で構成されている。QOLを死亡=0、 完全な健康=1とする比例尺度(ratio scale)で測定している。

3) Mealy MA, et al. Int J MS Care. 2019; 21: 129-134.
[利益相反:本論文の著者にAlexion Pharmaceuticals. Inc.の社員が含まれる。
また、著者にAlexion Pharmaceuticals. Inc.より資金提供されている者が含まれる]

排泄障害

40%の患者が排泄障害を訴えたと報告されています(海外データ)4)

40% 排泄障害 イメージ画像

Eaneff S, et al. Mult Scler Relat Disord. 2017; 17: 116-122より作図

研究概要
患者コミュニティである”PatientsLikeMe”のNMOSD患者522例が参加した後ろ向き研究。NMOSD患者の患者背景、症状及び治療についてデータ収集し、多発性硬化症患者と⽐較した。

4) Eaneff S, et al. Mult Scler Relat Disord. 2017; 17: 116-122.
[利益相反:本論文の著者にAlexion Pharmaceuticals. Inc.より資金提供されている者が含まれる]