抗補体(C5)モノクローナル抗体製剤

Ravulizumab(ユルトミリス®)

Ravulizumab(ユルトミリス®)は、Eculizumab(ソリリス®)の誘導体で、補体C5に高い親和性をもって特異的に結合し、C5のC5a及びC5bへの開裂を阻害する、ヒト化モノクローナル抗体製剤です。わが国では2019年6月に「発作性夜間ヘモグロビン尿症」を効能又は効果として製造販売承認を取得しました。NMOSDに関しては、2023年5月に「視神経脊髄炎スペクトラム障害(視神経脊髄炎を含む)の再発予防」を効能又は効果として製造販売承認を取得しています。
抗アクアポリン4(aquaporin-4、AQP4)抗体陽性のNMOSD患者の血管内では、形質細胞から抗AQP4抗体が産生されます1)。この抗AQP4抗体がアストロサイトの足突起状のAQP4に結合し、補体系(古典経路)が活性化されます1)。これにより補体C5が開裂し炎症誘発分子及び細胞融解分子(C5a及びC5b-9)が生じ、炎症の誘導、MACの形成、アストロサイトの損傷が引き起こされます2)。継続的な補体系の活性化と炎症により、アストロサイトの細胞死、脱髄、神経細胞死が引き起こされます2)
Ravulizumab(ユルトミリス®)は、C5に特異的に結合することにより、終末補体介在性炎症、細胞活性化及び細胞融解に対して拮抗する一方で、微生物のオプソニン化や免疫複合体の除去に不可欠な補体活性化の初期構成成分は保持します。
さらに、Ravulizumab(ユルトミリス®)は、pH6.0でC5からの解離及びヒト胎児性Fc受容体(FcRn)への結合親和性を高めることを目的に設計されました。そのため、遊離抗体が初期エンドソームからFcRnにより血管コンパートメントにリサイクルされ、その結果、Ravulizumab(ユルトミリス®)の終末相消失半減期が延長されます。

Ravulizumab(ユルトミリス®)の作用機序

Eculizumab(ユルトミリス®)の作用機序 イメージ画像

1)Weinshenker BG, et al. Mayo Clin Proc 2017; 92: 663-679.
2)Papadopoulos, MC et al. Nat Rev Neurol 2014; 10: 493-506.

Eculizumab(ソリリス®)

Eculizumab(ソリリス®)は補体C5の開裂を特異的に阻害し、終末補体複合体C5b-9の生成を抑制する抗補体モノクローナル抗体製剤で、わが国では2010年4月に「発作性夜間ヘモグロビン尿症における溶血抑制」を効能又は効果として製造販売承認を取得しました。NMOSDに関しては、2019年11月に「視神経脊髄炎スペクトラム障害(視神経脊髄炎を含む)の再発予防」を効能又は効果として製造販売承認を取得しています。
抗アクアポリン4(aquaporin-4、AQP4)抗体陽性のNMOSD患者の血管内では、形質細胞から抗AQP4抗体が産生されます1)。この抗AQP4抗体がアストロサイトの足突起状のAQP4に結合し、補体系(古典経路)が活性化されます1)。これにより補体C5が開裂し炎症誘発分子及び細胞融解分子(C5a及びC5b-9)が生じ、炎症の誘導、MACの形成、アストロサイトの損傷が引き起こされます2)。継続的な補体系の活性化と炎症により、アストロサイトの細胞死、脱髄、神経細胞死が引き起こされます2)
Eculizumab(ソリリス®)は、ヒト補体タンパクC5 に結合し、終末補体複合体生成を特異的に阻害します。C5からC5bの生成を阻害しても、C3bを介したオプソニン化、免疫保護機能及び免疫制御機能は維持されます。

Eculizumab(ソリリス®)の作用機序

近位補体・終末補体 イメージ画像

1)Weinshenker BG, et al. Mayo Clin Proc 2017; 92: 663-679.
2)Papadopoulos, MC et al. Nat Rev Neurol 2014; 10: 493-506.